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万引きで子どもが警察に?補導と親の責任を法的思考で考える

もし、あなたのお子さんが万引きをして警察に補導されたら、親としてどう向き合えば良いのでしょうか。子どもが起こした万引きという行為は、単なる「悪いこと」で終わらず、法的な責任や親の監督責任が問われる複雑な問題を含んでいます。この記事では、万引きと子どもの法的責任、警察による補導、そ…

こども六法スクール プロデューサー
2026.07.18
万引きで子どもが警察に?補導と親の責任を法的思考で考える

もし、あなたのお子さんが万引きをして警察に補導されたら、親としてどう向き合えば良いのでしょうか。子どもが起こした万引きという行為は、単なる「悪いこと」で終わらず、法的な責任や親の監督責任が問われる複雑な問題を含んでいます。この記事では、万引きと子どもの法的責任、警察による補導、そして親が果たすべき役割について、法的思考の視点から深く掘り下げていきます。感情に流されず、法律という冷静な視点から問題を構造化する力を養うヒントを、一緒に考えていきましょう。

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子どもの万引き、なぜ起こる?背景と社会の現状

子どもが万引きをしてしまう背景には、様々な要因が考えられます。例えば、友達からの誘いやプレッシャー、欲しいものを手に入れたいという衝動、親からの愛情不足や孤立感、あるいは単に「バレないだろう」という安易な考えなど、理由は多岐にわたります。近年では、SNSなどで特定の商品の情報が瞬時に広がり、子どもたちの物欲を刺激しやすい環境も影響しているかもしれません。

警察庁が公表している少年非行の統計データ(2026年版)によると、刑法犯少年の検挙・補導人員のうち、窃盗犯が依然として高い割合を占めており、その中でも万引きは特に目立つ存在です。これは、万引きが子どもたちにとって最も身近な犯罪の一つであることを示唆しています。

しかし、これらの背景や統計だけを見て「うちの子は大丈夫」と決めつけるのは早計かもしれません。重要なのは、万引きという行為の裏側にある子どもの心境を理解しようと努めるとともに、それが法的にどのような意味を持つのかを客観的に捉えることです。単に「悪いこと」と感情的に叱るだけではなく、なぜ法がこの行為を禁止しているのか、その理由を論理的に説明し、子ども自身に考えさせる機会を与えることが、再犯防止にも繋がります。

法律は、社会秩序を維持するためのルールであり、個人の感情やその場の雰囲気によって左右されるものではありません。子どもが万引きをしてしまった場合、その行為が法的にどのように評価されるのかを知ることは、親としての責任を果たす上で不可欠です。

少年法と刑事責任能力:万引きをした子どもはどうなる?

少年法と刑事責任能力:万引きをした子どもはどうなる?

子どもが万引きをした場合、まず気になるのは「警察に捕まるのか」「罰せられるのか」という点ではないでしょうか。ここで深く関わってくるのが、日本の「少年法」と「刑事責任能力」という概念です。

少年法は、20歳未満の少年を対象とした法律で、成人とは異なる手続きや処分を定めています。その最大の目的は、少年の健全な育成を促し、その立ち直りを支援することにあります。この法律があるからこそ、少年が罪を犯した場合でも、単に罰を与えるだけでなく、その背景にある問題を探り、教育的な視点からアプローチすることが重視されるのです。

特に重要なのが「刑事責任能力」の年齢です。日本の刑法では、14歳に満たない者は刑事責任を負わないと定められています(刑法第41条)。これは、14歳未満の子どもは、自分の行為が犯罪としてどのような結果をもたらすかを十分に理解し、その行為を制御する能力がまだ発達していないと考えるためです。

では、14歳未満の子どもが万引きをしても、何も責任を問われないのでしょうか?答えは「いいえ」です。刑事罰の対象とはならないものの、警察に補導され、児童相談所への通告や、家庭裁判所での少年審判の対象となる可能性があります。

  • 14歳未満の場合: 警察に補導された後、原則として児童相談所に通告されます。児童相談所は、子どもの状況に応じて、保護者への指導、一時保護、児童養護施設への入所など、様々な措置を検討します。場合によっては、家庭裁判所に送致され、少年審判の対象となることもあります。
  • 14歳以上20歳未満の場合: 警察に補導された後、原則として家庭裁判所に送致され、少年審判が行われます。少年審判の結果、保護観察、少年院送致、児童自立支援施設送致などの保護処分が下されることがあります。

ここで大切なのは、「罰されない=何をしてもいい」ではないということです。少年法が目指すのは、子どもが過ちから学び、社会の一員として成長していくための支援です。そのため、万引きという行為が社会的に許されないこと、そしてその行為には必ず何らかの責任が伴うことを、子ども自身が理解することが求められます。

こども六法スクールの授業では、「14歳未満は逮捕されない?」といった問いを入り口に、責任年齢の考え方や少年法の多層構造を、実際に条文を引いて読み解く形で扱います。法律の条文を自分で引いて読むことで、表面的な情報だけでなく、その背景にある理念や構造を深く理解する力を養うのです。

警察による補導:そのプロセスと子どもの権利

警察による補導:そのプロセスと子どもの権利

子どもが万引きをして警察官に声をかけられた場合、それは「補導」と呼ばれることがあります。補導は逮捕とは異なり、刑事手続きに入る前の段階で、子どもの安全確保や非行の防止、立ち直りの支援を目的として行われます。しかし、子どもや保護者にとっては、警察署に連れて行かれるという状況は非常に不安なものです。

補導のプロセスは、一般的に以下のように進みます。

  1. 発見・声かけ: 店員や目撃者からの通報、または警察官が現場で万引きを目撃した場合、子どもに声かけが行われます。
  2. 事情聴取: 警察署や交番に連れて行かれ、万引きの状況や動機、氏名、住所、学校名などが聞かれます。この際、子どもは自分の意思で話すことができ、話したくないことを強制されることはありません。
  3. 保護者への連絡: 子どもが未成年であるため、警察は保護者に連絡を取り、警察署に来るよう求めます。保護者は、子どもがどのような状況で何について話しているのかを確認する権利があります。
  4. 記録作成と指導: 事情聴取の内容が記録され、警察官から子どもや保護者に対し、非行防止や再犯防止のための指導が行われます。
  5. 帰宅または児童相談所への通告・家庭裁判所への送致: 状況に応じて、保護者とともに帰宅できる場合もあれば、児童相談所に通告されたり、家庭裁判所に送致されたりすることもあります。

このプロセスの中で、子どもにはいくつかの権利があります。例えば、「黙秘権」や「弁護士を呼ぶ権利」などです。これらは、大人と同じように子どもにも保障されている基本的な人権です。保護者は、これらの権利について子どもに伝え、適切に行使できるようサポートすることが重要です。

補導は、子どもが社会のルールを学び、健全な成長を遂げるための「きっかけ」となり得ます。警察官からの指導や、その後の手続きを通じて、子どもが自分の行為を深く反省し、二度と繰り返さないと心に決めることができれば、それは貴重な学びの機会となるでしょう。

大切なのは、警察官の指示には従いつつも、不明な点があれば質問し、子どもの権利が守られているかを確認することです。感情的にならず、冷静に状況を把握し、法的な視点から対処することが、子どもと家族を守る上で不可欠となります。

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身近なケースで考えてみよう

身近なケースで考えてみよう

ここで、保護者や子どもが実際に遭遇しそうな具体的なケースをいくつか提示し、これが法的にどうなるのかを一緒に考えてみましょう。

ケース1:友達とゲームセンターで遊んでいる最中に、友達に「これ、取ってきて」と唆され、ゲームセンターの景品を万引きしてしまったA君(12歳)。

A君は12歳で、刑事責任能力がないとされる年齢です。この場合、A君は刑事罰の対象とはなりませんが、警察に補導され、児童相談所への通告や、場合によっては家庭裁判所に送致される可能性があります。友達の唆しがあったとはいえ、A君自身の行為として万引きが行われた事実は残ります。ここでポイントとなるのは、A君が「友達に言われたから」という理由で、その行為の違法性をどの程度認識していたか、また、自分の行動を制御する能力がどの程度あったかという点です。また、唆した友達(仮に14歳以上)の責任も問われる可能性があります。

ケース2:お小遣いが足りず、どうしても欲しいカードゲームのパックを、コンビニでこっそりポケットに入れて店を出てしまったBさん(15歳)。

Bさんは15歳で、刑事責任能力があるとされる年齢です。この場合、Bさんは窃盗罪(刑法第235条)の刑事罰の対象となる可能性があります。警察に補導された後、家庭裁判所に送致され、少年審判を受けることになります。少年審判では、Bさんの万引きの動機、反省の態度、家庭環境などが総合的に考慮され、保護観察や少年院送致といった保護処分が決定されることがあります。このケースでは、Bさんが「わざと」商品を盗んだという「故意」が認められる可能性が高いでしょう。

ケース3:スーパーで母親の買い物について行ったC君(8歳)が、目を離した隙に、お菓子売り場にあったチョコレートをカバンに入れてしまった。レジを出たところで店員に気づかれ、呼び止められた。

C君は8歳で、刑事責任能力がないとされる年齢です。この場合、C君が刑事罰の対象となることはありません。しかし、店員に呼び止められた時点で、万引きという事実が発生しています。警察に連絡されれば、補導の対象となり、児童相談所への通告が検討されます。親である母親が近くにいたにもかかわらず、万引き行為を防げなかったという点で、後述する「親の監督責任」が問われる可能性も出てきます。このケースでは、C君が「盗む」という認識を持っていたかどうかも論点になりますが、行為としては窃盗にあたります。

これらのケースを通じて、年齢や状況によって法的な扱いが異なること、そしてどのケースでも「万引きは許されない行為である」という原則は変わらないことが分かります。

法律は何と決めているか

法律は何と決めているか

万引きという行為は、日本の法律では主に「窃盗罪」として扱われます。その根拠となる法律と条文、そして関連する概念について見ていきましょう。

窃盗罪(刑法第235条)

窃盗罪は、刑法第235条に以下のように定められています。

刑法第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

この条文を法的に分解すると、窃盗罪が成立するための「要件」が見えてきます。

  1. 他人の財物であること: 盗んだものが、自分のものではなく、他人の所有物であること。万引きの場合、店舗の商品がこれに該当します。
  2. 窃取したこと: 窃取とは、他人が占有している財物を、その意思に反して自分の占有に移すことです。具体的には、商品をレジを通さずに持ち出したり、自分のカバンに入れたりする行為を指します。
  3. 不法領得の意思があること: ここが非常に重要なポイントです。不法領得の意思とは、「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用または処分する意思」をいいます。簡単に言えば、「自分のものにしてやろう」「勝手に使ってやろう」という気持ちがあったかどうかです。

子どもが万引きをした場合、特に幼い子どもが「お菓子を欲しくて持っていっただけ」という場合など、この「不法領得の意思」がどこまであったかが争点になることがあります。しかし、一般的には、レジを通さずに持ち出す行為自体が、不法領得の意思を推認させるものとされます。

少年法と責任年齢

前述の通り、少年法は20歳未満の少年を対象とし、特に「刑事責任能力」という点で成人とは異なる扱いをします。

  • 刑法第41条 > 14歳に満たない者の行為は、罰しない。

これは、14歳未満の子どもには、自分の行為が法的にどのような意味を持つかを判断し、行動を制御する能力が十分に備わっていないという考えに基づくものです。そのため、14歳未満の子どもが万引きをしても、刑法上の「罰」を受けることはありません。しかし、少年法によって家庭裁判所での審判の対象となったり、児童相談所による指導や保護の対象となったりする可能性はあります。

親権者の監督責任(民法第709条・第714条)

子どもが万引きなどの不法行為を行った場合、子ども自身の責任だけでなく、親の責任も問われることがあります。これは民法上の「不法行為」と「親権者の監督責任」という概念に基づきます。

  • 民法第709条(不法行為による損害賠償) > 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

子どもが万引きをした場合、これは他人の財産権を侵害する不法行為にあたります。店舗側は、盗まれた商品の代金相当額や、万引きによって被った損害(警備費用など)の賠償を請求することができます。

  • 民法第714条(責任無能力者の監督義務者の責任) > 1. 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。 > 2. 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

この条文は、特に14歳未満など刑事責任能力がない子どもが不法行為を起こした場合に、その子どもを監督する義務を負う親(親権者)が損害賠償責任を負う可能性があることを示しています。つまり、万引きで子どもが警察に補導され、店側から損害賠償を請求された場合、親がその賠償金を支払う義務を負う可能性があるということです。

ただし、民法第714条には「ただし書き」があります。「監督義務者がその義務を怠らなかったとき」や「その義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき」は責任を負わないとされています。これは、親が子どもの監督義務をきちんと果たしていたにもかかわらず、万引きを防げなかったような特別な事情がある場合には、親の責任が免除される可能性を示唆しています。しかし、実際にこのただし書きが適用されるケースは限定的であり、多くの場合、親の監督責任が問われることになります。

このように、万引きという一つの行為の背後には、刑法、少年法、民法といった複数の法律が複雑に絡み合っています。これらの法律を理解することは、子どもが起こした問題に冷静かつ適切に対処するために不可欠です。

ケースにあてはめて考える

ケースにあてはめて考える

先ほどの3つのケースを、今学んだ法律の知識にあてはめて具体的に考えてみましょう。

ケース1:友達とゲームセンターで遊んでいる最中に、友達に「これ、取ってきて」と唆され、ゲームセンターの景品を万引きしてしまったA君(12歳)。

  • 窃盗罪の成立: A君はゲームセンターの景品(他人の財物)を、レジを通さずに持ち出す行為(窃取)を行っています。また、友達に唆されたとはいえ、「自分のものにしたい」という不法領得の意思があったと判断される可能性が高いです。したがって、形式的には窃盗罪の構成要件を満たします。
  • 刑事責任能力: A君は12歳なので、刑法第41条により刑事責任能力はありません。そのため、刑事罰を受けることはありません。
  • 警察の対応: 警察に補導された場合、児童相談所に通告されるのが原則です。児童相談所は、A君の家庭環境、友達との関係、万引きに至った経緯などを調査し、適切な指導や支援を検討します。場合によっては家庭裁判所に送致され、少年審判の対象となる可能性もあります。
  • 親の監督責任: A君の行為によってゲームセンターが損害を被った場合、民法第714条に基づき、親が損害賠償責任を負う可能性があります。親が「友達と遊んでいたので目を離していた」というだけでは、監督義務を怠らなかったとは認められにくいでしょう。「友達に唆された」という点は、親の監督義務の程度や責任の判断に影響する可能性はありますが、基本的には親の責任が問われる方向で検討されます。

ケース2:お小遣いが足りず、どうしても欲しいカードゲームのパックを、コンビニでこっそりポケットに入れて店を出てしまったBさん(15歳)。

  • 窃盗罪の成立: Bさんはコンビニの商品(他人の財物)を、レジを通さずに持ち出す行為(窃取)を行っています。お小遣いが足りないという動機から、カードゲームのパックを「自分のものにしたい」という明確な不法領得の意思があったと判断されるでしょう。窃盗罪が成立します。
  • 刑事責任能力: Bさんは15歳なので、刑法第41条により刑事責任能力があります。刑事罰の対象となる可能性があり、少年法に基づき家庭裁判所に送致され、少年審判を受けることになります。
  • 警察の対応: 警察に補導・逮捕された場合、家庭裁判所に送致され、少年審判が行われます。審判では、Bさんの反省の有無、更生への意欲、家庭環境、再犯の可能性などが総合的に評価され、保護観察、少年院送致などの保護処分が決定されることがあります。
  • 親の監督責任: Bさんが15歳で刑事責任能力がある場合でも、民法第714条の「監督義務者の責任」が適用される可能性はあります。ただし、14歳未満の場合に比べ、Bさん自身の責任の比重が大きくなる傾向があります。それでも、親は子の万引きを未然に防げなかったという点で、損害賠償責任を負う可能性は十分にあります。店舗側は、盗まれた商品の代金賠償を請求するでしょう。

ケース3:スーパーで母親の買い物について行ったC君(8歳)が、目を離した隙に、お菓子売り場にあったチョコレートをカバンに入れてしまった。レジを出たところで店員に気づかれ、呼び止められた。

  • 窃盗罪の成立: C君はスーパーのチョコレート(他人の財物)を、レジを通さずにカバンに入れる行為(窃取)を行っています。8歳という年齢で、どこまで「盗む」という認識があったかは難しい問題ですが、一般的には「自分のものにしたい」という不法領得の意思があったと判断されるでしょう。形式的には窃盗罪の構成要件を満たします。
  • 刑事責任能力: C君は8歳なので、刑法第41条により刑事責任能力はありません。刑事罰を受けることはありません。
  • 警察の対応: 警察に補導された場合、児童相談所に通告されます。児童相談所は、C君の行動の背景や家庭環境を調査し、親への指導や、必要に応じてC君への心理的なケアなどを検討します。
  • 親の監督責任: C君の行為によりスーパーが損害を被った場合、民法第714条に基づき、親である母親が損害賠償責任を負う可能性が非常に高いです。買い物中に目を離したという状況は、「監督義務を怠らなかった」とは認められにくいでしょう。母親は、盗まれたチョコレートの代金を弁償することになります。このケースでは、親がその場で店員に謝罪し、弁償することで、警察沙汰になる前に解決するケースも多いですが、法的には親の監督責任が問われる状況です。

これらのケース分析を通じて、万引きという行為が、年齢や状況によって様々な法的側面を持つことが理解できたのではないでしょうか。法律は、個々の事情を考慮しつつも、客観的な事実と要件に基づいて判断を下します。この「法的に分解・評価する知的対象」として問題を捉える視点こそが、こども六法スクールが子どもたちに伝えたい「法的思考力」の真髄です。

家庭で子どもと話し合うヒント

家庭で子どもと話し合うヒント

子どもが万引きをしてしまった時、あるいはニュースなどで万引きの話題が出た時、保護者としてどのように子どもと向き合い、話し合えば良いのでしょうか。感情的に叱るだけではなく、法的思考を育むための建設的な対話を促すヒントをいくつかご紹介します。

  1. 「もし自分がお店の人だったら、どう感じる?」と問いかける。 万引きは、お店の財産を奪う行為であると同時に、お店で働く人の気持ちを踏みにじる行為でもあります。子どもに、被害者の立場になって想像させることで、行為の重大性を具体的に感じさせることができます。「もし自分が大切にしているものを誰かに勝手に持っていかれたら、どう思う?」と、身近な例に置き換えて考えてみるのも良いでしょう。
  2. 「万引きは、なぜ法律で禁止されているんだろう?」と考える。 単に「悪いことだからダメ」で終わらせず、なぜ社会が万引きを禁止するルール(法律)を作っているのかを問いかけます。お店が成り立たなくなり、社会の信頼が失われる、といった社会全体の視点から、法律の役割を考えさせる機会です。これは、法が「論理」に基づいて作られていることを理解する第一歩にもなります。
  3. 「もし万引きがバレたら、どんなことが起きると思う?」と想像させる。 警察に補導される可能性、児童相談所や家庭裁判所に行く可能性、親が賠償責任を負う可能性、学校での処分、友達からの信頼を失うことなど、具体的な結果を想像させます。これは、自分の行動が自分だけでなく、周囲の人々や社会全体にどのような影響を及ぼすのかを多角的に考えさせる練習になります。
  4. 「もし欲しいものがあったら、どうすれば手に入れられる?」と解決策を一緒に探す。 万引きに至った動機が「欲しいものがあったけれどお金がなかった」という場合、その根本的な解決策を一緒に考えます。お小遣いをどう管理するか、お手伝いをして稼ぐ方法はないか、本当に必要なものか見極めるにはどうすれば良いかなど、具体的な行動計画を立てることで、健全な欲求との向き合い方を学ぶことができます。
  5. 「もし友達が万引きを誘ってきたら、どう断る?」とシミュレーションする。 友達からの誘いやプレッシャーは、子どもにとって大きな要因の一つです。その場でどう対応すれば良いか、具体的な言葉や行動を一緒に考えることで、いざという時に自分の意思を貫く力を養います。これは、メディアリテラシーにも通じる、「流されない力」を育むことにも繋がります。

これらの問いかけは、子どもに「正解」を押しつけるものではありません。むしろ、答えのない問いに対して、根拠を持って自分の頭で考え、言葉にするプロセスを重視します。この対話を通じて、子どもは論理的思考力や、自分や周囲で起きていることを感情の渦ではなく「法」というOSで言語化・構造化する力を身につけていくことができるでしょう。

まとめ:「知っている」が子どもの選択肢を増やす

子どもが万引きをして警察に補導されるという事態は、保護者にとって計り知れない衝撃と不安をもたらします。しかし、この困難な状況を乗り越えるためには、感情に流されず、冷静に法的な側面から問題を捉え、対処する力が求められます。

万引きは、刑法上の窃盗罪にあたる行為であり、年齢によっては少年法の適用を受け、家庭裁判所での審判や児童相談所での指導の対象となります。また、親権者には民法上の監督責任があり、子どもが起こした損害について賠償義務を負う可能性もあります。これらの法的な知識は、子どもを守り、適切な対応を取る上で不可欠な「知恵」です。

「知っている」ことは、子ども自身の選択肢を増やし、将来的なリスクを回避する力に直結します。法律の条文を読み解き、物事の原則と例外を見極め、言葉の定義のブレを見抜く力は、万引きのような具体的な問題だけでなく、現代社会で生きていく上で必要なあらゆる場面で役立つ、普遍的な論理的思考力となります。

こども六法スクールの授業では、この万引きのテーマも、実際にケースを分解し、関連する条文(刑法、少年法、民法など)を自力で引いて読む形で扱っています。これにより、子どもたちは法的な知識を得るだけでなく、その知識を現実の問題に応用する「法的思考力」を体系的に身につけることができます。私たちは、子どもたちが感情の渦に巻き込まれず、法という冷静な視点から自分や周囲で起きていることを言語化・構造化する力を養うことを目指しています。

子どもがトラブルに巻き込まれた時、あるいはトラブルを起こしてしまった時、親が「知っている」こと、そして子どもが「考える力」を持っていることが、何よりも強力な助けとなるはずです。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 子どもが万引きで補導されたら、学校に連絡が行くのでしょうか?

A1. 子どもが万引きで補導された場合、警察から学校に連絡が行くことはあります。特に、事案の重大性や子どもの年齢、学校との連携の必要性によって判断されます。学校側も、子どもの健全な育成のために、警察からの情報をもとに、指導やサポートを検討することがあります。

Q2. 親が万引きの被害店舗に謝罪に行けば、警察沙汰にならずに済むことはありますか?

A2. 事案の軽重や店舗の判断にもよりますが、子どもが万引きをしてしまった直後に、親がすぐに店舗に赴き、誠心誠意謝罪し、商品の弁償や賠償を行うことで、店舗側が警察への被害届提出を見送るケースはあります。しかし、これはあくまで店舗側の判断に委ねられるため、必ずしも警察沙汰にならないとは限りません。

Q3. 「万引き」と「窃盗」は違うものですか?

A3. 「万引き」は、店舗の商品を盗む行為を指す俗称です。法律上は、この行為は「窃盗罪」(刑法第235条)に該当します。したがって、万引きは窃盗罪の一種であり、法律用語としては「窃盗」が正しい表現となります。

Q4. 子どもが万引きを繰り返す場合、親はどう対処すれば良いですか?

A4. 万引きを繰り返す場合、単に叱るだけでなく、その背景にある子どもの心の状態や環境に目を向けることが重要です。専門家(児童相談所、スクールカウンセラー、心療内科など)に相談し、適切な支援を受けることを強くお勧めします。また、法教育を通じて、行為の重大性を論理的に理解させることも再犯防止に繋がります。

Q5. 親の監督責任は、子どもが何歳まで問われるのでしょうか?

A5. 民法第714条に定める親権者の監督責任は、基本的に子どもが未成年である間、つまり18歳になるまで問われる可能性があります。ただし、子どもの年齢が上がるにつれて、子ども自身の責任の比重が大きくなる傾向があり、親の監督責任が免除される「ただし書き」が適用されやすくなる場合もあります。

ご利用にあたって(免責)
本記事は、法律を身近に理解するための一般的な解説であり、個別の法的アドバイスではありません。実際のトラブルや具体的なご状況については、弁護士や法テラスなどの専門機関にご相談ください。本記事は『こども六法』著者・山﨑聡一郎の法教育の考え方にもとづき、こども六法スクールが作成しています。

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